すけべ爺さんの恋は叶うのか?久米仙人のお話。

細い目を垂らすいやらしい爺さんの顔。

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その目線の先には川沿いで着物から白い足を出す若い女

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曾我蕭白(1730-1781)。

蕭白は前回で紹介した若冲と同じ頃に活躍した京都商人出の絵師や。


ちょうどこの頃江戸中期、京都は芸術的な雰囲気が高まってたって言われてるで。

そんな雰囲気のなか若冲とともに個性的な技量とセンスで活躍したんやなー!

 

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そんな蕭白が描いたのが今回紹介するこの絵や。

1759年に完成させたで。

『久米仙人図屏風』。

名前だけ聞いたら苦しい修行を乗りこえた仙人が描かれてるんかなと思うけど、実際描かれてるのはエロい顔で女を見つめるじいさん。

実はこのエロい顔のじいさんが仙人!

ホンマかいな!!

 

これな、平安時代に書かれた日本最大の説話集って言われてる『今昔物語集』からとった一コマやねん。

この仙人もともと奈良吉野の竜門寺で修行に励んでたんや。

空を飛ぶ術を修行のすえに体得するんやけど、空飛んでる最中に下を見るとこの女が川沿いで洗濯してるねんな。

これまた、この女のあらわになった白い足が官能的でもあるんやな。

仙人はこの女に見惚れてしまうねん。

そしてなんとこの仙人、、、

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仙術の力を失ってしまう!!!

 

空を飛べなくなった仙人は下界に落ちてしまうんや。

これまたすごいのが、落ちた後、仙人はこの女を妻にして一緒に暮らすねん。

 

この絵はそんな二人が生活してる場面。

右側で仙人が竹かごを編んで、川沿いにいる女と見つめあってる。

これ見つめあってるのか仙人は足を見てるんかわからんけど。

老人のすけべさを揶揄したような絵。

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そんな二人のあいだには一本のどんぐりの木。

この木の描き方がすごいねんな。

ちょうど蕭白が30歳の頃、まだ画家の卵の時に描いた絵や。

蕭白の特徴である荒くて骨太の線で描かれてるわ。

エロ仙人の脂っこい性欲のメタファーのようであり、二人の間に相容れない何かがあると示唆してるようでもある。

知らんけど。

 

一生懸命修行して空飛べるようになって、空飛べたことで下界の女を見つけるきっかけになり、女に惚れてしまい仙術の力を失ってしまう。

失ったものもあったけど、結果的に仙人幸せそうで良かったんやん。

とてもコミカルでユニークな人物が登場する屏風やな。

 

 

動物たちの夢の園。伊藤若冲やん。鳥獣花木図屏風やで。

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ここどこやねん。

どこかの島?

動物だけが暮らす島?

めっちゃ楽しそうやん

動物たちだけでずるいわ。

うらやましいわ。

 

象がいてその周りをいろんな動物が囲ってるなー。

下には牡丹の花が咲いてて、上にはりんごやみかんか何かの実が生ってる。

さるがその木に登ったり、枝にぶら下がったりして楽しそうやん。

さる、素敵やん。

 

この絵は江戸時代18世紀に描かれた「鳥獣花木図屏風」っていうねん。伊藤若冲(1716-1800)作やで。

若冲ブームって言われるくらい人気な絵師や。

 

若冲はほんまに人気やで。

2016年に東京都美術館で開かれた若冲展は4時間待ちやったらしいわ。

給水スポットもできたらしく。

若冲の人気っぷりが伺えるわ。

すごいやん。

 

2006年に東京国立博物館で開かれた「プライスコレクション 若冲と江戸絵画」展の時は、1日6500人ぐらいの人が来てんて。

2カ月弱で約32万人が来たんやと。

世界中で1日の平均入場者数が一番多かった展覧会や!ってイギリスのアート専門誌が発表してんて。

おそるべしやで、若冲

 

 

でこの「鳥獣花木図屏風」やねんけど、

この絵細かく縦横に線走ってる。

ここがおもしろいんやけど、この絵モザイク画になってるんや。

マス目一つがセンチ角ほど。

絵の大きさは高1さ168cm、幅は374cmと巨大。

めっちゃ大きいサイズを細かいマスが埋め尽くす。

その数なんと86000ほど。

それもこのマスひとつひとつ細かく塗り込まれてるという。

おそろしいわ、若冲

 

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この描き方のせいかちょっとデジタルっぽくもあるな。

テクノロジー集団のチームラボがこの絵をもとにデジタルアートを作ったのも話題になったやん。

パソコンとかスマホも拡大したら四角いドットの集まりでできてるもんな。

300年以上も前のやけど、なんか古臭くないもんなー。

現代的な感じするもするよな。

 

 

で気になるのが名前は「鳥獣花木図屏風」やのに、鳥がいてへん。

実はもう片方あってそれがこれ!

 

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牡丹が咲いてて、木の実がなってて同じような場所やけど、こっちは鳥だけ。

鶏、オウム、鶴、ペリカンとかいるな。

いろんな鳥がいる中で、真ん中ちょっと左でパッと翼広げてポーズとってるの孔雀じゃくてこれ鳳凰

現実の鳥だけじゃくなくて空想上の鳥も一緒に描かれてるんやね。

そして同じ世界に全く違和感なく暮らしてる。

鳥たちの楽園。

さっきの象がいる絵のほうにも、細かく見ていくと麒麟や一角獣が描かれてることに気付く。

夢と現実が混ざってミラクル。素敵やん。

 

そんな動物たちの天国のような空間なんやけど気になるんが、象の背中にある風呂敷みたいな布やねんな。

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動物だけの世界になんで風呂敷があるんかしら。

象だけは人間社会から来たとか?

それはそれで意味わからんか。

この布ってこの絵に唯一見られる人工的なモチーフやん。

動物だけの夢の世界に人間は行かれへんけど、この布が繋いでくれてるような。

おいでって言ってくれてるような。

知らんけど。

うん、鳥獣花木図屏風、素敵やん。

 

 

ちなみにこの象が描かれてる側の絵は、長い間アメリカのジョー・プライスさんのコレクションやったんやけど、出光美術館(東京千代田区)が今年に購入したらしいね。

bijutsutecho.com

 

近いうちにこのダイナミックで繊細なこの絵見れそうやね。

マス目をじっくり見なあかんわ。

楽しみやわ。